知らなかったが,つい最近まで「牛」は食べる物ではなかったのだ.
ある程度まとまった畜産てのは農業に適さない土地で行なわれ始めたワケで,近隣に牧草地が豊富であるとか,さもなきゃ遊牧で成立してきた.改めて調べると,乳用牛にしても肉用牛にしてもアジア地域固有の畜産品種ってのは見当たらない(それこそ水牛くらい?).
中国にしても鳥や豚にはメジャーなものや影響を与えた品種が色々あるけど,牛に関してはとんと聞かない.つまりそれだけ食用としての牛には興味が無かったんだ(或いは扱うには大き過ぎると考えたのかも知れないけど).
大和では縄文とか弥生てな時代から既に牛を家畜化してたらしいが,農耕や荷役を主目的としていた.その後仏教の影響で殆ど食用とされなくなり(支配層の間では薬用としていたなんて話も有るが),明治に入って肉食が広まりだしてからも,牛の扱いはあまり変わらなかったようだ.
明治期に肉用牛の畜産も始まったのだが,海外種とのデタラメな雑種だらけで,ようやく皆さんが珍重する和牛の品種が確立されたのは,何と昭和もかなり入ってからなのだ.こぉゆぅコトは意外と知らないもんだね.
これまた驚くけど,こんな風にそれまで殆ど牛を食べなかった大和人が大きく変わったのは,何と農業に機械が導入され始めた 1960 年代に入ってからのこと.つい最近の話だ.牛を使役に使わなくなった結果,何とかしなきゃと奔走した人が居たのかも知れない.吉野家1号店オープンは 1973 年(新橋だと思ってたけど小田原だそうで).
しかしだいたい何時の間に肉の優劣では,「牛」が一番みたいな感じになっちまったんだろうな? 冷静に考えりゃ高いだけぢゃん.ただ何となく,牛食の事情と高度成長期という時代を通じて,稀少感の有った「牛」がステータスっぽくなったのかなと思える.そして牛肉の輸入自由化が 1991 年 4 月なんで,これまたまだたいして経ってなかったんだな.
ハナシを戻すと,冊封使の時代に牛を珍重している様子の無かった中国では果たしてどうかと言うと,これが実に日本に輪をかけて牛好きでは無かったのだ.これも改めて知るとかなり「へぇー」なハナシ.
# 北海道もそうだけど,韓国も同様みたいだ.
(2)肉牛・牛肉産業
中国の肉牛生産の歴史は新しく、90年代に入りそれまでの役畜の飼養から本格的な牛肉生産への取り組みが始められた。FAOによると2004年の中国の牛肉生産量は645万トン、米国、ブラジルに次ぐ世界第3位(全世界のシェア10.8%)となっている。しかし、北京、四川、上海、広東の4大系統の中国料理においてその食材として牛肉が利用されることはあまりなく、肉類の消費の中で牛肉は最も低い水準にあった。また、従前は、牛肉のほとんどが役畜の老廃牛由来のものであったが、近年の肉牛改良に伴う肉質向上や所得向上により、生産、消費とも増加している。しかし、牛肉の消費量は世界的にみれば依然として非常に低い水準となっている。
http://alic.lin.go.jp/annual/2006/fore/cn.html
つまり肉牛を飼育するのはそれだけ面倒かつ高コストという証なんじゃなかろうか.環境負荷や食糧(穀物供給)事情を考えると,喜んで牛喰ってるのは,先進国としてはどうよって感じだろ?
しかしこの先もし中国人が本格的に牛肉志向になりでもしたら,それはそれで食糧危機の引金になりかねないし,かなりやっかいなことに.日本の畜産は存続できなくなるだろうな.
追記
牛肉生産国と言うと,アメリカ,ブラジルを筆頭に,オーストラリアかカナダ?あたりのイメージだったんだけど,今や中国が世界第3位ってのにはマジ驚いたな.
中国での輸出入で言うと,近年では若干ながら輸出超過の様子.オーストラリアから子牛を輸入して,香港経由で成牛を各国に輸出してる模様*1.
昨今ウナギの偽装が度々問題になってるけど,そのうち牛肉でも起きるのか?
*1:統計上の都合なのか「輸出先」としていまだに「香港」というくくりなのがイマイチ良く分からないが(本当に輸出扱い?),当然中継ぎに過ぎないだろう.