まあ色んな意見はあるけど,現状の問題の指摘をしていることと,一定の改善の方向性を示していることには意味があると思う.
NBO 厚生労働省が新薬承認審査を迅速化するために審査担当者の倍増を決定しました。本当に効果はあるのですか?
安田 確実に審査の迅速化は期待できると思います。というのは、欧米と比べて日本では審査官が圧倒的に少ないからです。米国には約2000人いますが、日本には10分の1の約200人しかいません。英国と比べても3分の1の規模で、先進国では最も少ないのです。
審査官のマンパワーの差は個人の能力だけでは埋めがたい。現在は審査官1人当たりの担当品目が非常に多く、製薬会社の申請書類が机の上に山積みになっているのではないかと推測します。審査人員が増えれば、そうした状況は改善されるはずです。
世界トップ100の医薬品のうち約3割が日本で販売されず
そもそも厚労省の決定の背景には、欧米で売られている医薬品の多くが日本では使用が認められていない現実があります。世界中で販売されている医薬品のうち、売り上げが多い上位100品目について調査したところ、約3割が日本では承認されていないことが分かりました。
欧米の医薬品が日本での使用を認められるまでには、非常に長い時間がかかります。海外で新薬が発売されてから日本で発売されるまでの時間差は約4年と言われていて、“ドラッグラグ”と呼ばれています。その原因の1つが新薬審査期間が長いことであり、それを改善しようというのが今回の厚労省の決定です。
ただし、だからといってドラッグラグがすべて解消できるわけではありません。日本のこれまでの状況と比べれば事態は改善するでしょう。しかし、欧米と比べるとまだ物足りなさはあります。新薬審査を迅速化するだけで解決できる問題はではないのです。
審査官の増員は、あくまでドラッグラグ解消に向けた第1歩です。問題の根っこは非常に深く、どれか1つを改善すればすべて良くなるということではありません。恐らく厚労省をはじめ医薬関係者の多くがそのことを認識していると思います。
「遅い、高い、質が悪い」──三拍子揃った日本の治験
NBO ドラッグラグ解消のためには、ほかにどんな課題があるのですか。
安田 例えば、治験(承認審査申請前に新薬の有効性や安全性について製薬会社が患者データを集めて検証すること)の問題です。日本の治験は「遅い、高い、質が悪い」と言われています。新薬開発に欠かせない治験環境が十分に整っていないのです。
問題なのは諸外国の多くで認可されてる薬剤等に対して,国内ではそのプロセスが概ね遅いってことと,これまでの認可ペースからみて異様に処理の早いケースがあるってこと.異様に早い場合ってのは役所仕事の常からして(ただでさへ人手不足と言ってるのに)不自然なワケで,そういうケースに対するチェック機構が無いってのもアブナイ話だ.
超スピード承認
イレッサは、新しいタイプの抗がん剤として、2002年1 月25日に承認申請され、5 カ月あまり後の7 月5 日に承認されました。かつてない超スピード審査です。これまでの新薬承認は、平均18か月、少し早くなった最近でも平均12か月です。この早さは異例です。
製造販売元のアストラゼネカ社では薬価収載(注1)を待たずに7 月16日から発売を開始しました。8 月21日の中央社会保険医療協議会(中医協:注2)において、8月30日付けで薬価収載することが承認され、保険診療が認められるようになったのです。
保険で承認された後、イレッサの使用は大幅に増え、犠牲者も日を追って増えてしまいました。 保険で使えるようになった適応症は「手術不能又は再発非小細胞肺癌」。後者は、ほぼ「前に抗がん剤を使用したことのある肺癌」という意味です。他の抗がん剤との併用も別に制限されていません。
同じ情報で米国は承認延期、日本は保険適用
イレッサを使用した患者のほうが早く死亡したという臨床試験の結果は、日本が新薬承認をした7月5日には多分わかっていたのだと思いますが、確たる証拠はありません。しかし、確実にいえることは、8月19日に米国のFDA(食品医薬品局)にこの結果が報告され、FDAはこのデータを重視して、承認延期を決定しました。
一方、日本ではどうだったか。実は、アストラゼネカ社は厚生労働省にも、ほぼ同時8月20日にこのデータを報告しました。しかし、このデータを厚労省が受け取りながら、中央社会保険医療協議会(中医協)は翌21日、イレッサの保険適用を認めました。
やっぱ食品医薬品関係の統括部署は,一元化してもっと体制強化しないと危険ぢゃねぇーのか?