東京電力は31日、福島第一、福島第二(福島県)、柏崎刈羽(新潟県)の3原子力発電所の原子炉全17基のうち13基について、国による定期検査の際に、延べ199件のデータ改ざんなどの不正行為があったと発表した。
柏崎刈羽1号機では、緊急炉心冷却装置(ECCS)の一部が故障していたにもかかわらず偽装するなど、安全の根幹にかかわる機器のデータ改ざんも含まれていた。
報告を受けた経済産業省原子力安全・保安院は、内容を精査したうえで行政処分が必要かどうかを検討する。
東電は昨年12月、中国電力でデータ改ざんが明るみになったのをきっかけに保安院の指示を受け、調査を進めていた。
柏崎刈羽1号機では、1992年5月、3系統あるECCSのうち、1系統のポンプが国の検査官の立ち会い前日に故障。そこで当日、中央制御室の表示装置を不正に操作し、正常のように見せかけ、検査官の目をごまかした。3系統すべてが完全に機能することが合格の条件だった。
東電は修理しないまま、原子炉を起動し、起動2日後にようやく修理を終えたという。安全上の問題はなかったと説明しているが、原子炉等規制法違反で運転停止などの処分対象になる可能性がある。
定期検査時ではないが、同原発4号機では95年、排気筒から大気に放出した放射能の濃度が低くなるよう記録を操作していた。ただ、実際に放出した放射能は排出基準の3万分の1程度だった。ほかの原子炉でも、97年ごろまで同様の改ざんが行われた可能性が高い。
福島第1原発1号機では、79〜98年にかけて主蒸気配管の流量計のデータを操作。配管が破断した際に原子炉を密閉する重要な隔離弁が正常に作動しない恐れがあったにもかかわらず、定期検査では、実態を隠して合格していた。隔離弁に関連する不正は、94〜98年にかけ、柏崎刈羽原発1〜3号機でも行われていた。
東電では2002年に、重要配管や原子炉内構造物のひび割れなどを長年隠していたことが発覚。定期検査で不正があった福島第1原発1号機は1年間の運転停止になり、社長、会長が引責辞任した。
今回判明した事例は、すべて02年以前に起きているが、当時の社内調査で、これほど多数の改ざんを見落としたことは、今後、大きな問題になりそうだ。