【ゆがむ郵政「改革」】法案採決強行 大村敬一・早大大学院教授に聞く
2010.5.29 07:59
■時間もかけず議論もなく
郵政改革法案が28日、衆院総務委員会で、与党の賛成多数で可決した。実質審議1日という異例の採決強行。元内閣府審議官の大村敬一・早稲田大学大学院教授に、その問題点を聞いた。
今回の郵政改革法案は、一刻を争うような問題ではなく、なぜ国会で強行採決までして急ぐ必要があるのか分からない。「夏の参議院選挙を視野に入れた郵政票狙い」と勘ぐられても仕方ないだろう。
時間をかければよいというものではないが、金融審議会などの有識者による検討の機会もなく、段階を踏んだ議論をしていない。パブリックコメント(一般からの意見募集)には最低限かけるべきだった。
このような状況に陥ったのは、郵政民営化のやり方が不徹底だったからだ。郵便貯金と簡易保険は、高度成長を官主導で支えた財政投融資の「集金マシン」だった。財投改革で郵政資金の預託義務は廃止され、使命はもう終えた。郵貯・簡保は、構造的に赤字体質の郵便事業とは分離して段階的に縮小すべきだった。
だが不採算の郵便事業を郵貯と簡保で支える形が民営化の時点でできてしまった。この構造は郵貯・簡保の限度額引き上げによる肥大化がなければ支えられない。政府が3分の1超の株式を保有するという「暗黙の政府保証」を背景に、地域金融機関からの資金シフトは必至だが、それが郵政改革法案の隠れた狙いでもあろう。
さらに日本国債の国内消化に郵貯・簡保の資金は大きな貢献をしている。国債価格への影響を考え、現行並みの国債消化を維持しつつ、運用の多様化も実現するには、一層の肥大化が避けられそうにない。
また民間金融機関が「民業圧迫」と不公平であることを主張するのはもっともで、(自国民と同じ権利を相手国の国民や企業に保証する)内国民待遇を主張する海外金融機関からの攻撃対象にもなる。
こうした法案が採決されてしまうのは、連立政権の不安定性もあろう。経済の非効率な資源配分を見過ごすことによるリスクが顕在化しつつある。(談)
話は違うが,アメリカ国債全部売り払うからなくらいの脅しかければ良いんぢゃね?